深く豊かな自然に抱かれた聖地、熊野。
古代の人々にっとって熊野とは、祖霊のこもる根の国、イザナミが赴いた黄泉の国であったという。
この道を、どんな人々が、いつから歩いてきたのか。

熊野古道とは、熊野三山（熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社）へと通じる参詣道の総称のことであり、また、霊場・山岳修行の道でもある。
今でこそ、交通機関が発達し、気軽に行くことのできる熊野詣でだが、
かつては 道半ばにして行き倒れて亡くなる人々も多かった。

なぜ人々は、何度も厳しく険しい道を越えて熊野三山へ詣でたのだろうか。それは、信じる者もそうでない者も、貧しき者も富める者も、女性も、病を持つ者も、等しく祈念の機会を与えられてきたからだ。

苔むした古道もさることながら、熊野の雄大な自然に染みこんだ、先人たちの深い祈りの声に耳を澄ませて歩きたい。