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「ぐっど・くおりてぃ!」
コンシェルジュ :
深山 哲夫
【2005年12月24日[Sat]】
「ぐっど・くおりてぃ!」
1年3ヶ月の南米旅行中、幸いなことに盗難にはほとんど遭わなかった。
「盗難未遂」が1度あったぐらいで、なくなったものと言えばパンツ(下着)1枚だけ。
盗難にあいそうになったのは、ボリビアの首都
ラパス
を出る日のことだ。
すり鉢の底にあるラパスの中心から、「自転車で延々とはい上がるのはイヤだ!」
ということで、エル・アルト(すり鉢の上の地域)までバスを使うことにした。
バスが通る大通りで、自転車から満載の荷物を順番に外し、
荷物をまとめていたそのときだ。
通りがかりの男が置いているフロントバッグをさり気なく持ち上げ、
今までと変わらぬペースで歩いて行く。
フロントバッグには、カメラや手帳、ちょっとした現金も入っている。
男は私が目を離しているとでも思ったのだろうか。
すぐに飛び掛る勢いで追いかけると、男はあきらめたのか、
バッグを置いて立ち去った。
バスを待っている他の人達も見ていたし、人通りも多い。
近くに警官もいたかもしれない。
私が騒げば、男は捕まったかもしれないが、声を出す暇もなかった。
「気付かれなければ、もうけもの」みたいな、単なるこそ泥だ。
強盗をするような勇気は無い、ごくフツーの男。
ペルーやボリビアには、こそ泥が多いらしい。
突然、その辺の普通のボリビア人が皆、こそ泥に見えてきて、
バスをやめて結局タクシーでエルアルトまで移動することにした。
ラパスでの滞在は楽しかっただけに、少し残念な出来事だった。
そして、パンツをなくしたのは、アルゼンチンの首都
ブエノスアイレス
。
ブエノスアイレスでは、「Victria」という宿に1ヶ月ほど滞在した。
ここは長期旅行者の間では大変メジャーな宿で、タンゴを習うお姉さんやおじさん、スペイン語を習う日本人青年、バックパッカーなどで常に賑わっている。
とても便利な場所にある、レトロでなかなか居心地の良い宿だ。
中庭のバルコニーに洗濯物を干すスペースがたっぷりとあり、
簡単な自炊もできる。
しかしある日の夕方、洗濯物を取り入れようとしたら、
パンツが1枚なくなっていたのだ。
風で落ちたのかと思い、そこらじゅうを探してみたが見当たらない。
宿の人に訊いても「知らない」と言う。
「おかしいなあ~。中庭だから風に飛ばされても、どこにも行くはずないのに・・・。」
その数日後、妙な光景を見た。
それは、昼間からワインを飲み酔っ払って昼寝をしたりしている、
いつから滞在しているのか分からない、謎のヨーロッパ系の白髪のおじさんだった。
いつもどこか遠くを見ている感じの、どう見ても旅行者に見えないような人だった。
中庭のバルコニーに干してある、他の客の洗濯物を触りながら、
「ぐっど・くおりてぃ」
と、つぶやいている。
その様子は、ちょっと怖かった。
私のパンツも、「ぐっど・くおりてぃ」だったのだろうか。
確かに、モンベルで千円ほどした、速乾性ものだったが・・・。
南米旅行7ヶ月目で、私の所持パンツは3枚から2枚になり、
残りの8ヶ月は2枚で過ごすこととなったのだった。
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「ぐっど・くおりてぃ!」
1年3ヶ月の南米旅行中、幸いなことに盗難にはほとんど遭わなかった。
「盗難未遂」が1度あったぐらいで、なくなったものと言えばパンツ(下着)1枚だけ。
盗難にあいそうになったのは、ボリビアの首都ラパスを出る日のことだ。
すり鉢の底にあるラパスの中心から、「自転車で延々とはい上がるのはイヤだ!」
ということで、エル・アルト(すり鉢の上の地域)までバスを使うことにした。
バスが通る大通りで、自転車から満載の荷物を順番に外し、
荷物をまとめていたそのときだ。
通りがかりの男が置いているフロントバッグをさり気なく持ち上げ、
今までと変わらぬペースで歩いて行く。
フロントバッグには、カメラや手帳、ちょっとした現金も入っている。
男は私が目を離しているとでも思ったのだろうか。
すぐに飛び掛る勢いで追いかけると、男はあきらめたのか、
バッグを置いて立ち去った。
バスを待っている他の人達も見ていたし、人通りも多い。
近くに警官もいたかもしれない。
私が騒げば、男は捕まったかもしれないが、声を出す暇もなかった。
「気付かれなければ、もうけもの」みたいな、単なるこそ泥だ。
強盗をするような勇気は無い、ごくフツーの男。
ペルーやボリビアには、こそ泥が多いらしい。
突然、その辺の普通のボリビア人が皆、こそ泥に見えてきて、
バスをやめて結局タクシーでエルアルトまで移動することにした。
ラパスでの滞在は楽しかっただけに、少し残念な出来事だった。
そして、パンツをなくしたのは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。
ブエノスアイレスでは、「Victria」という宿に1ヶ月ほど滞在した。
ここは長期旅行者の間では大変メジャーな宿で、タンゴを習うお姉さんやおじさん、スペイン語を習う日本人青年、バックパッカーなどで常に賑わっている。
とても便利な場所にある、レトロでなかなか居心地の良い宿だ。
中庭のバルコニーに洗濯物を干すスペースがたっぷりとあり、
簡単な自炊もできる。
しかしある日の夕方、洗濯物を取り入れようとしたら、
パンツが1枚なくなっていたのだ。
風で落ちたのかと思い、そこらじゅうを探してみたが見当たらない。
宿の人に訊いても「知らない」と言う。
「おかしいなあ~。中庭だから風に飛ばされても、どこにも行くはずないのに・・・。」
その数日後、妙な光景を見た。
それは、昼間からワインを飲み酔っ払って昼寝をしたりしている、
いつから滞在しているのか分からない、謎のヨーロッパ系の白髪のおじさんだった。
いつもどこか遠くを見ている感じの、どう見ても旅行者に見えないような人だった。
中庭のバルコニーに干してある、他の客の洗濯物を触りながら、
「ぐっど・くおりてぃ」と、つぶやいている。
その様子は、ちょっと怖かった。
私のパンツも、「ぐっど・くおりてぃ」だったのだろうか。
確かに、モンベルで千円ほどした、速乾性ものだったが・・・。
南米旅行7ヶ月目で、私の所持パンツは3枚から2枚になり、
残りの8ヶ月は2枚で過ごすこととなったのだった。
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