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田園のサン・ガルガーノ修道院☆トスカーナ奇跡の旅
コンシェルジュ : 菅澤 彰子
【2008年5月4日[Sun]】
田園のサン・ガルガーノ修道院☆トスカーナ奇跡の旅
「ただ、そこに、それがあるだけで感動的」
そういう建築は
この世に決して多くはないだろう
Aさんの旅の最大の目的は
そのひとつを訪ねることにあった
それが、私の住むトスカーナにある
すこぶる行きにくい場所だ
それもそのはず
中世の修道士たちが
人里離れたところに建てたもの
トスカーナの美しい田園風景の中に
忽然として現れる
シトー派修道院、サン・ガルガーノ
by Akiko Sugesawa
この舞台装置のような姿に
見覚えのある人もいようか
非常に芸術性の高い映画の中で
美しすぎるほどに描かれている
ロシアの監督
A.タルコフスキーの『ノスタルジア』
日本での公開は'87年
カンヌ国際映画祭でも何か賞を取っている
Aさんは
名画を上演する映画館で働くかたわら
この映画を見たという
数々の世界の名作を見ながら
この映画の印象が強く残ったらしい
ストーリーよりも
静かに流れるシーンの数々が記憶に残る
サン・ガルガーノ修道院の
ピクチャレスク(絵画的)なフォルムが
強烈なインパクトを与えている
Aさんは、映画を見たとき
この建物は「作り物だと思っていた」
それが本当にあると知ったのは
去年のこと
それから、トスカーナへの旅を思い立った
by Akiko Sugesawa
「シークエンス」という言葉がある
もともと映画用語で
「幾つかのシーンを寄せ集めた一続きの画面」
この言葉は、建築の世界でもよく使われる
人が建築と出会って
その中に入って
どんどん進むたびに
どんな視界がひろがり
どんな空間の中にいるか・・・
これもまた、場面の移り変わりである
* * *
あの人は
そういうことに興味を抱いていたのだろうか?
私がエムイチ(Master 1:大学院修士課程1年)のとき
ドクター(Doctor:大学院博士課程)にすごく優秀な先輩がいた
その人がある日
『ノスタルジア』の場面のスケッチを見せながら
すごく熱心に話してくれた
私だけに話してくれたのか・・・?
いや、きっとちがう
いつも人で溢れている研究室だったから
何人かの人の輪の中で
別の研究室に属すその人が話していたのかも知れない
モノトーンで描かれた
何枚ものスケッチが印象に残った
そして、すごく一生懸命に話していた
その人の熱気が伝わってきた
それが、私と『ノスタルジア』との出会いである
それからわずか2年後に
私は初めてサン・ガルガーノを訪れた
探して行った、というわけではない
トスカーナを旅する間に
ここにあることを偶然に知り、訪れたのだ
私はドクターの先輩のために
サン・ガルガーノで小冊子をお土産に買った
ところがその後
その人に会うことは2度となかった
その人の話を聞く経験が無ければ
Aさんの旅づくりをすることは
まずなかったと思う
* * *
Aさんにお会いしたとき聞かれた
「今までサン・ガルガーノに行きたい人って
いませんでしたか?」
そして自問した
「誰にでもこれをやるか?」
答えはNOである
トスカーナの旅づくりは
数学の難問を解くのに似ている
Aさんは私に出会うまで
旅行会社をいくつもあたっていた
だからそのことをご存知だ
それをやるかどうかは
やはり相手が誰なのかによる
Aさんは今回の旅のタイトルを
「ノスタルジアの旅」と自ら称していた
まず私は、この質問を投げかけた
「『ノスタルジア』のどこがお好きですか?」
そして返ってきたメールの文面から
Aさんの思いが分かった
だから、力を貸すことにした
まず根本的に決めたことがある
「この人の場合
専用車という常套手段は使わない」
そんなにも強く想っているならば
自力でがんばって、何とかそこまで行って
「やっと出会える」
そういう場面を
私は演出したいと思った
そして、「そこにできるだけ長く居てもらう」ことだ
サン・ガルガーノは一日の中で
表情を刻々と変える
上空をひとすじの雲が流れただけで
別の顔を見せる
タルコフスキーの映画は雨のシーンが多い
サン・ガルガーノ修道院には
真昼の輝く太陽よりも、哀愁がよく似合う
ロシアの映画監督は、作品の中で
その性質を存分に生かしきっている
* * *
「本当に行けるかどうか分からなかった」
という場所に、Aさんはとうとう行った
のどかな春の午後
トスカーナの田園風景を抜けて
ずっと思い続けたその相手に
いよいよ面会した
by Akiko Sugesawa
そこには林檎の花が咲いていた
彼女には桜の花の借りがある
こちら→
その話も直接してしまった
(だから桜の記事はお蔵入り!(笑))
思いがけない贈り物をいただいた☆
なんと、手作り!
プロフィールの写真から
→こちら
私をイメージしてくれたそう
石から何からパーツを
ひとつひとつ選んでつくってくれた
マリンプルーの首飾り
嬉しくて言葉がない・・・
サン・ガルガーノは
Aさんの期待に見事に応えた
彼女の表情からは
「実際に見たら、ガッカリするかも」
という不安も吹き飛んでいた
もちろん、私には自信があったから
これをやった☆
今のトスカーナは
午後8時過ぎに日が落ちる
私はそのころ、彼女を残して
サン・ガルガーノを後にした
暗闇の中
ライトアップされるだろうことは知っていた
私はただ
翌朝に霧が立ち込めてくれるのを祈っていた
霧の中の姿が最も美しく
詩情に満ち溢れることを
知っていたからだ
修道院が一番良く見える部屋で
彼女はひとり、一夜を明かした
朝、鳥のさえずりで目覚めてすぐに
どんな驚きをもって
窓からそれを眺めたのだろうか
↑Aさんご自身による撮影 2008/04/24 早朝の霧の中で
→Aさんからのお便りはこちら
>>メールを送る
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田園のサン・ガルガーノ修道院☆トスカーナ奇跡の旅
「ただ、そこに、それがあるだけで感動的」
そういう建築は
この世に決して多くはないだろう
Aさんの旅の最大の目的は
そのひとつを訪ねることにあった
それが、私の住むトスカーナにある
すこぶる行きにくい場所だ
それもそのはず
中世の修道士たちが
人里離れたところに建てたもの
トスカーナの美しい田園風景の中に
忽然として現れる
シトー派修道院、サン・ガルガーノ
by Akiko Sugesawa
この舞台装置のような姿に
見覚えのある人もいようか
非常に芸術性の高い映画の中で
美しすぎるほどに描かれている
ロシアの監督
A.タルコフスキーの『ノスタルジア』
日本での公開は'87年
カンヌ国際映画祭でも何か賞を取っている
Aさんは
名画を上演する映画館で働くかたわら
この映画を見たという
数々の世界の名作を見ながら
この映画の印象が強く残ったらしい
ストーリーよりも
静かに流れるシーンの数々が記憶に残る
サン・ガルガーノ修道院の
ピクチャレスク(絵画的)なフォルムが
強烈なインパクトを与えている
Aさんは、映画を見たとき
この建物は「作り物だと思っていた」
それが本当にあると知ったのは
去年のこと
それから、トスカーナへの旅を思い立った
by Akiko Sugesawa
「シークエンス」という言葉がある
もともと映画用語で
「幾つかのシーンを寄せ集めた一続きの画面」
この言葉は、建築の世界でもよく使われる
人が建築と出会って
その中に入って
どんどん進むたびに
どんな視界がひろがり
どんな空間の中にいるか・・・
これもまた、場面の移り変わりである
* * *
あの人は
そういうことに興味を抱いていたのだろうか?
私がエムイチ(Master 1:大学院修士課程1年)のとき
ドクター(Doctor:大学院博士課程)にすごく優秀な先輩がいた
その人がある日
『ノスタルジア』の場面のスケッチを見せながら
すごく熱心に話してくれた
私だけに話してくれたのか・・・?
いや、きっとちがう
いつも人で溢れている研究室だったから
何人かの人の輪の中で
別の研究室に属すその人が話していたのかも知れない
モノトーンで描かれた
何枚ものスケッチが印象に残った
そして、すごく一生懸命に話していた
その人の熱気が伝わってきた
それが、私と『ノスタルジア』との出会いである
それからわずか2年後に
私は初めてサン・ガルガーノを訪れた
探して行った、というわけではない
トスカーナを旅する間に
ここにあることを偶然に知り、訪れたのだ
私はドクターの先輩のために
サン・ガルガーノで小冊子をお土産に買った
ところがその後
その人に会うことは2度となかった
その人の話を聞く経験が無ければ
Aさんの旅づくりをすることは
まずなかったと思う
* * *
Aさんにお会いしたとき聞かれた
「今までサン・ガルガーノに行きたい人って
いませんでしたか?」
そして自問した
「誰にでもこれをやるか?」
答えはNOである
トスカーナの旅づくりは
数学の難問を解くのに似ている
Aさんは私に出会うまで
旅行会社をいくつもあたっていた
だからそのことをご存知だ
それをやるかどうかは
やはり相手が誰なのかによる
Aさんは今回の旅のタイトルを
「ノスタルジアの旅」と自ら称していた
まず私は、この質問を投げかけた
「『ノスタルジア』のどこがお好きですか?」
そして返ってきたメールの文面から
Aさんの思いが分かった
だから、力を貸すことにした
まず根本的に決めたことがある
「この人の場合
専用車という常套手段は使わない」
そんなにも強く想っているならば
自力でがんばって、何とかそこまで行って
「やっと出会える」
そういう場面を
私は演出したいと思った
そして、「そこにできるだけ長く居てもらう」ことだ
サン・ガルガーノは一日の中で
表情を刻々と変える
上空をひとすじの雲が流れただけで
別の顔を見せる
タルコフスキーの映画は雨のシーンが多い
サン・ガルガーノ修道院には
真昼の輝く太陽よりも、哀愁がよく似合う
ロシアの映画監督は、作品の中で
その性質を存分に生かしきっている
* * *
「本当に行けるかどうか分からなかった」
という場所に、Aさんはとうとう行った
のどかな春の午後
トスカーナの田園風景を抜けて
ずっと思い続けたその相手に
いよいよ面会した
by Akiko Sugesawa
そこには林檎の花が咲いていた
彼女には桜の花の借りがある こちら→
その話も直接してしまった
(だから桜の記事はお蔵入り!(笑))
思いがけない贈り物をいただいた☆
なんと、手作り!
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私をイメージしてくれたそう
石から何からパーツを
ひとつひとつ選んでつくってくれた
マリンプルーの首飾り
嬉しくて言葉がない・・・
サン・ガルガーノは
Aさんの期待に見事に応えた
彼女の表情からは
「実際に見たら、ガッカリするかも」
という不安も吹き飛んでいた
もちろん、私には自信があったから
これをやった☆
今のトスカーナは
午後8時過ぎに日が落ちる
私はそのころ、彼女を残して
サン・ガルガーノを後にした
暗闇の中
ライトアップされるだろうことは知っていた
私はただ
翌朝に霧が立ち込めてくれるのを祈っていた
霧の中の姿が最も美しく
詩情に満ち溢れることを
知っていたからだ
修道院が一番良く見える部屋で
彼女はひとり、一夜を明かした
朝、鳥のさえずりで目覚めてすぐに
どんな驚きをもって
窓からそれを眺めたのだろうか
↑Aさんご自身による撮影 2008/04/24 早朝の霧の中で
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