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コンシェルジュブログ

コンシェルジュ : 周佐 英徳
【2005年9月11日[Sun]】

海外旅行保険はほんとに必要?(part3)

「これは昨日採血した血液検査の結果です」
ドクターはそう言って一枚の白い紙を見せた。
「その結果、あなたの白血球と血小板の数値が異常に下がっています。何故こんな数値になったのかわかりませんが、このままでは明日死んでも不思議ではありません、leukopeniaだと思います」
ドクターは検査結果をみながらそう言った。
「leukopenia?」
医療用語の英語がわからないボクは辞書をひいてみたが載っていなかった。
「その単語は載っていない、何か他の言い方は?」
ドクターはボクの辞書を取り上げると単語を探し出した。
「leukemia」
ドクターはそこを指差した。
「白血病。。。。。」
leukemiaのところにはそう記してあった。

ボクはドクターにその血液検査の結果を見せてくれるように頼んだ。実は旅に出る前に血液検査の会社で働いていたので結果は見れば自分でわかる。
「ほんとだ。。。」
確かに検査結果は白血球と血小板の数値が異常に下がっている。特に血小板はもうなくなるんじゃないかというくらいの数値だった。
「なんでこんなことに、これじゃあほんとに明日死んでしまう。」
最初は風邪かなんかだと思っていたが、熱が下がらずマラリアだと思いこみ、大学病院に運ばれて白血病。この時やっと自分が大変なことになっていることに気づいた。
「ドクター、日本大使館に連絡して欲しい、ボクは日本に帰ります。こんなところで死ぬなら日本で死にたい。。。」
「今日は土曜日だ、大使館は休みだ」
ドクターは申し訳なさそうにそう言った。
「でも君の事を書いたFAXを大使館に送っておくよ。それで輸血をしようと思う。君の血液型は?」
そりゃそうだろう、とにかく輸血してもらわないと今夜にでも死にそうな状態だ。輸血しないと助からないくらいボクでもわかった。
しかしここ最近、輸血パックとかでエイズに感染する話が多く、ボクはとても心配だった。
「大丈夫、俺の血液型はO型だ、俺の血を輸血するよ」
ドクターはそういって腕をまくった。
「ドクターこそ病気持ってないだろうな、大丈夫か?」
「Trust me!」
ドクターは笑いながらそう言った。確かに訳のわからない輸血パックより安心かもしれない。
その日からボクは輸血とまだ下がらない熱の為に点滴をくりかえした。

白血球と血小板が減少しているといっても体調には変化はなかった。ただ熱があるだけで歩き回ることもできるし、何ら通常の時とかわらなかった。ただ病院の食事が毎日豆スープみたいなのとパンばかりで食欲はなかった。ボクは食事にはほとんど手を付けず、1Fの売店で売っているオレオのビスケットばかり食べていた。普段は高くて買わないオレオのビスケット、この時ばかりはためらうことなく買って食べた。



翌日曜日、ボクはまだ生きていた。
「気分はどうだい?」
午前の回診に来たドクターは昨日より明るい顔をしていた。
「熱はまだあるけど食欲がなくて身体がだるい、元気がでないよ。早く日本に帰りたい。」
ビスケットばかり食べているせいか、体力が日増しになくなっていくような気がした。
「それで提案なんだが、骨髄の検査をさせてくれないか?」
「骨髄検査?」
「そうだ。血小板は骨髄で作られている。骨髄を調べれば君の身体の中で血小板を作っているけどなくなっていっているのか、初めからつくっていないのかがわかるんだ。」
骨髄検査は知っていた。胸と腰の所に針を打って骨髄液を採取するのだ。大した検査ではないが針を刺すときに痛い。
大学病院といっても日本のどんな病院よりボロく、日増しに元気のなくなっているボクはそんなことはしたくなかった。
「検査は嫌です。早く日本に帰りたい、こんなところで死にたくない。。。」
ボクは何を言われても「日本に帰る」の一点張りだった。

その日の午後、ドクターが一人の男を連れてきた。何でもこの大学で唯一日本語が話せるそうだ。
ドクターは彼をおいて「しばらく話してな」と言って出ていった。
彼はベッドの横にあった椅子に座るといきなり話しだした。
「あなた何故検査しない?」
彼の日本語は上手くなく、ドクターの英語と同じで直訳だ。
「痛いから嫌なんだ」
設備がボロいなんて言えないボクはそう誤魔化した。
「あなた痛いのと死ぬのどっちいい?ボクは死ぬのは嫌だ、痛くても検査する。」
「。。。。。」
確かに死んでしまっては何もかも終わり。それくらいの判断もできないくらいボクは弱っていたみたいだった。
「するする、検査するよ。ボクも死にたくないよ。明日検査するってドクターに言っておいて。」
「わかった、今から言いに行ってくるよ」
彼は笑って出ていった。

その夕方、いつものように若い看護婦が採血にきた。この時彼女は2回ボクの腕に針を刺すのを失敗した。それが痛いというよりとても腹が立ったボクは彼女を怒鳴りつけた。普段ではこんなことでは怒らないが、いらいらしていたボクはまだ二十歳そこそこの彼女を怒鳴り散らした。
「I'm sorry。。。」
彼女は英語は話せないが、ボクが怒っているというのわかるらしく、か細い声でそう言った。
「I'm sorry? No sorry!」
ボクは更に怒鳴り散らした。
「もう明日の検査はしない!」
彼女は「検査しない」とボクが言ったのがわかったらしく、逆にトルコ語で「何で検査しない!」みたいなことを言って逆ギレしたように大きな声でボクを怒鳴ってきた。
「俺は明日自力でも日本に帰るからな!」
「You tomorrow die!」
そう彼女は捨てセリフを残して部屋を出ていった。

そして翌日、大使館が開く月曜日がやってきた。。。。。。。。To be continued


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