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マニラの旅(part1)
コンシェルジュ : 周佐 英徳
【2005年10月13日[Thu]】
マニラの旅(part1)
久しぶりに旅に出た。
空港の出口、そこは怪しい奴らがうようよボクを待ちかまえていた。
「タクシー?、タクシー?」
いつもなら2、3人に囲まれてそう言われるのだが、不思議なことに誰も寄ってこない。マニラには華僑がたくさん住んでいるので中国人に見えるのだろうか?寄ってこられると鬱陶しいが、誰も来ないとこれまた寂しい。
出発前に本屋で立ち読みしたガイドブックをメモした紙を取り出す。別に短期なので買えばいいものを、何故か出発前から貧乏な旅モードになっている。
「空港出て左→ジプニーをひらう→LRTバクララン駅」
ジプニーとは米軍が使っていたジープを改造した私営乗り合いバスのようなもの。どこでも合図をすれば乗り降りできて便利だが、行き先がわかりにくい。
フロントガラスに行き先が書かれた札のような物がいくつかはってある。大体が通りの名前だったり駅の名前だったりするが、これを素早く見て手を挙げて停める。ぼやぼやしてると乗れない。
空港を左に出たはずだかジプニーはなかなか見つからなかった。それどころか近くを走ってる気配が感じられない。近くにいた警備員にジプニーでバクララン駅へ行きたいと尋ねると親切に答えてくれる。フィリピンでは英語がよく通じる。
教えられた通りに行くとジプニーがたくさん走っていた。だがどれがバクララン駅に行くのかさっぱりわからない。ボクは隣に立っていた学生にジプニーを停めてもらった。
「バクララン駅に行くかい?」
「OK!」
ドライバーはそう言ってボクに早く乗るように合図した。
ジプニーの中は両端に長いすがおいてあるシンプルなもの。空いていれば問題ないが、結構混んでいる時が多い。大きな荷物を持っているとかなり厳しい。目的地に着けば「ストップ!」と声をかければどこでも停まってくれる。どうやらバクララン駅は終点だったみたいだ。LRTとは高架鉄道のことで、マニラを南北に結んでいる。空港に一番近い
駅が南の終点バクララン駅だ。
駅の周辺は大きなマーケットになってるようで、その猥雑さには圧倒される。改札口で荷物チェックを受けてチケットを買う。ここでまたメモを取り出す。
「バクララン駅→カリエド駅→オンピン通り→ファーストホテル」
空港から今夜の宿「First Hotel」までの一番安い行き方だ。
列車は日本の地下鉄みたいなもので、終点から乗ったせいか簡単に座れた。カリエド駅はここから9駅目、外の景色を楽しむ余裕もないくらい乗客が増えてきた。カリエド駅に着いたときには降りるのが大変なくらい満員だ。
駅に着くと今度は「オンピン通り」を探す。ホテルは駅から5分くらいと書いてあったので簡単に見つかると思っていたが、これがなかなか見つからない。駅の回りをうろうろ30分は歩いただろうか、やっと「Ongpin St」と書かれた標識を見つけた。
オンピン通りあたりは中華街になっている。通りをしばらく歩くと「First Hotel」の看板が見えた。
その上には「第一社旅」と書かれている。
「なるほど、それでファーストホテルか。」
納得したのはいいが、どう考えてもこの漢字はおかしい。書くなら「第一旅社」となるはず。
「漢字のわからないフィリピン人が看板を作ったのかな?」
そんなことを考えながらホテルに入った。
レセプションには中華系の若い男が座っていた。中国語を話すかもしれないが、広東語だと困るので英語で尋ねてみた。
「部屋ありますか?」
「あるよ。」
彼も英語でそう答えた。
「シングルで一泊いくら?」
「800ペソ。エアコンにシャワーとトイレがついてるよ。」
800ペソといえば1500円くらいだ。
今まで東南アジアで一泊1000円以上の部屋に泊まった記憶はない。
「じゃあ部屋見せてくれる?」
別にトイレとシャワーは共同でもよかったのだが、ここは社会人、奮発してみた。
彼は近くにいたおじさんを呼ぶとカギを三つ渡した。そのおじさんはボクに付いてくるようい言うとエレベーターに乗り込んだ。
「エレベーター付きか?」
エレベーター付きのホテルなんて滅多に泊まったことがない。
部屋は想像以上に綺麗だった。べッドも大きいし机にテレビまで付いている。
ボクはいつものようにトイレはちゃんと流れるか、シャワーは出るか、カギは大丈夫かとチェックして、最後にエアコンの効き具合を調べてテレビをつけてみた。驚いたことに衛生番組が看れる。チャンネルを回していくとNHKのBSも映った。
「OK!この部屋にするよ。」
おじさんは親指を立てて「Good Room!」と言ってご機嫌そうだった。
とりあえず1泊分のお金を払ってベッドに横になる。
空港からここまで2時間近くかかっただろうか。使ったお金はLRTとジプニーで22ペソ、40円くらいだ。
もし空港からタクシーを使っていたなら約200ペソ、30分くらいで着いていただろう。200ペソといえば約400円。
400円を40円に節約するために時間と労力を使ってホテルまで来た。それでもボクはとても満足していた。この心地よい旅の疲れ、自分らしさを取り戻したような気がした。ボクはもう旅モードに入っていた。
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マニラの旅(part1)
空港の出口、そこは怪しい奴らがうようよボクを待ちかまえていた。
「タクシー?、タクシー?」
いつもなら2、3人に囲まれてそう言われるのだが、不思議なことに誰も寄ってこない。マニラには華僑がたくさん住んでいるので中国人に見えるのだろうか?寄ってこられると鬱陶しいが、誰も来ないとこれまた寂しい。
出発前に本屋で立ち読みしたガイドブックをメモした紙を取り出す。別に短期なので買えばいいものを、何故か出発前から貧乏な旅モードになっている。
「空港出て左→ジプニーをひらう→LRTバクララン駅」
ジプニーとは米軍が使っていたジープを改造した私営乗り合いバスのようなもの。どこでも合図をすれば乗り降りできて便利だが、行き先がわかりにくい。
フロントガラスに行き先が書かれた札のような物がいくつかはってある。大体が通りの名前だったり駅の名前だったりするが、これを素早く見て手を挙げて停める。ぼやぼやしてると乗れない。
空港を左に出たはずだかジプニーはなかなか見つからなかった。それどころか近くを走ってる気配が感じられない。近くにいた警備員にジプニーでバクララン駅へ行きたいと尋ねると親切に答えてくれる。フィリピンでは英語がよく通じる。
教えられた通りに行くとジプニーがたくさん走っていた。だがどれがバクララン駅に行くのかさっぱりわからない。ボクは隣に立っていた学生にジプニーを停めてもらった。
「バクララン駅に行くかい?」
「OK!」
ドライバーはそう言ってボクに早く乗るように合図した。
ジプニーの中は両端に長いすがおいてあるシンプルなもの。空いていれば問題ないが、結構混んでいる時が多い。大きな荷物を持っているとかなり厳しい。目的地に着けば「ストップ!」と声をかければどこでも停まってくれる。どうやらバクララン駅は終点だったみたいだ。LRTとは高架鉄道のことで、マニラを南北に結んでいる。空港に一番近い
駅が南の終点バクララン駅だ。
駅の周辺は大きなマーケットになってるようで、その猥雑さには圧倒される。改札口で荷物チェックを受けてチケットを買う。ここでまたメモを取り出す。
「バクララン駅→カリエド駅→オンピン通り→ファーストホテル」
空港から今夜の宿「First Hotel」までの一番安い行き方だ。
列車は日本の地下鉄みたいなもので、終点から乗ったせいか簡単に座れた。カリエド駅はここから9駅目、外の景色を楽しむ余裕もないくらい乗客が増えてきた。カリエド駅に着いたときには降りるのが大変なくらい満員だ。
駅に着くと今度は「オンピン通り」を探す。ホテルは駅から5分くらいと書いてあったので簡単に見つかると思っていたが、これがなかなか見つからない。駅の回りをうろうろ30分は歩いただろうか、やっと「Ongpin St」と書かれた標識を見つけた。
オンピン通りあたりは中華街になっている。通りをしばらく歩くと「First Hotel」の看板が見えた。
その上には「第一社旅」と書かれている。
「なるほど、それでファーストホテルか。」
納得したのはいいが、どう考えてもこの漢字はおかしい。書くなら「第一旅社」となるはず。
「漢字のわからないフィリピン人が看板を作ったのかな?」
そんなことを考えながらホテルに入った。
レセプションには中華系の若い男が座っていた。中国語を話すかもしれないが、広東語だと困るので英語で尋ねてみた。
「部屋ありますか?」
「あるよ。」
彼も英語でそう答えた。
「シングルで一泊いくら?」
「800ペソ。エアコンにシャワーとトイレがついてるよ。」
800ペソといえば1500円くらいだ。
今まで東南アジアで一泊1000円以上の部屋に泊まった記憶はない。
「じゃあ部屋見せてくれる?」
別にトイレとシャワーは共同でもよかったのだが、ここは社会人、奮発してみた。
彼は近くにいたおじさんを呼ぶとカギを三つ渡した。そのおじさんはボクに付いてくるようい言うとエレベーターに乗り込んだ。
「エレベーター付きか?」
エレベーター付きのホテルなんて滅多に泊まったことがない。
部屋は想像以上に綺麗だった。べッドも大きいし机にテレビまで付いている。
ボクはいつものようにトイレはちゃんと流れるか、シャワーは出るか、カギは大丈夫かとチェックして、最後にエアコンの効き具合を調べてテレビをつけてみた。驚いたことに衛生番組が看れる。チャンネルを回していくとNHKのBSも映った。
「OK!この部屋にするよ。」
おじさんは親指を立てて「Good Room!」と言ってご機嫌そうだった。
とりあえず1泊分のお金を払ってベッドに横になる。
空港からここまで2時間近くかかっただろうか。使ったお金はLRTとジプニーで22ペソ、40円くらいだ。
もし空港からタクシーを使っていたなら約200ペソ、30分くらいで着いていただろう。200ペソといえば約400円。
400円を40円に節約するために時間と労力を使ってホテルまで来た。それでもボクはとても満足していた。この心地よい旅の疲れ、自分らしさを取り戻したような気がした。ボクはもう旅モードに入っていた。