コーカサス地方をご存じですか?
2014年に冬季オリンピックが開催されたロシアのソチは、コーカサス山脈の西端に位置しています。
コーカサス山脈の南、黒海とカスピ海に挟まれているのがコーカサス地方で、ソ連から独立したジョージア(旧グルジア)、アゼルバイジャン、アルメニアの三カ国です。
バクー
高層ビルが林立する新市街と世界遺産の旧市街、近郊には先史時代の遺跡
アゼルバイジャンの首都バクーは、カスピ海に突き出たアブシェロン半島に位置し、旧市街は2000年に世界遺産に登録されています。
帝政ロシアの時代から石油が生産されていたので、近郊には油井が今でも見られます。
オイルマネーで経済発展著しく、新市街には近代的なビルが建ち並んでいます。
2012年に完成した高さ190m の3つのビル群「フレイムタワー」は、アゼルバイジャン近代化の象徴です。
首都バクーから南西に約60km、国立保護区となっている「ゴブスタンの岩絵の文化的景観」は2007年に登録されたアゼルバイジャンのもうひとつの世界遺産です。
先史時代の人々の暮らし、戦い、動物、天体などの紀元前3,000年前の壁画が数多く残っています。
すぐ近くには、「泥火山(でいかざん)」があり、今でもグツグツと粘土質の泥水が湧き出ています。
ほかに、バクー近郊には、18世紀にこの地に住んでいたゾロアスター教徒によって造られた拝火教寺院(アテシュギャーフ)があります。
地表に噴出した天然ガスが自然発火したことから、ゾロアスター教徒の聖地・巡礼地と見なされていました。
「燃える山」という意味の「ヤナルダー」は山の斜面から天然ガスが吹き出て燃え続けているバクー近郊の観光ポイントです。
トビリシ
ジョージアの首都トビリシは多様な民族と文化の交差点
この国では主としてキリスト教(ジョージア正教)が信仰されています。
しかし、旧市街の歴史地区には、グルジア正教総主教座(総本山)のスィオニ教会、アルメニア教会、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)、モスク(イスラム教礼拝堂)、カトリック教会などがすぐ近くに建っています。
これはジョージアという国がシルクロードの一部として、東西文化の交通の要衝であったためです。
多様な民族と文化が共存している風景は、このトビリシならでは。
新市街で最も賑やかなルスタヴェリ通り沿いには、国会議事堂やイスラム建築のオペラ劇場があります。
見逃せないのは国立美術館で、現代ジョージア美術が展示されているほか、ジョージアの国民的画家ニコ・ピロスマニの作品が多く展示されいます。
農村の風景やその地で暮らす人々を好んで描いたピロスマニには、マルガリータという女優に恋をしてバラの花を贈り続けたエピソードが残っています。
ロシアの人気歌手プガチョワがロシア語で歌い、加藤登紀子が日本語に訳して歌った「百万本のバラ」は日本人にもよく知られています。
三方を山や小高い丘に囲まれたトビリシは、街を見おろせるポイントがいくつかありますが、中でも市内を一望できるナリカラ要塞には夜遅くまで運行されるロープウェイあり、絶景の夜景が見られます。
また、旧市街にはドーム型の建物の温泉浴場が軒を連ねます。
硫黄泉で、イスラム世界のハマムのようにマッサージやあかすりのサービスが受けられます。
首都トビリシは、ジョージア語で「温かい所」を意味する「トビリ」が語源ですが、それはこの温泉に由来しています。
一日の終わりには、温泉に入って、一日の疲れをいやしてはいかがでしょう。
アララト山と修道院
国家として民族として世界で最初にキリスト教を受容した国
旧約聖書の創世記には大洪水とノアの方舟の物語があります。
アルメニアの首都エレバンから南へ40km、トルコ共和国の東端に位置しているアララト山は、ノアの方舟が漂着した地といわれています。
アララト山は古くからアルメニア人が多く居住してきた地域でした。
アララト山を望むホルヴィラップ修道院の歴史は、キリスト教を受容した4世紀初頭までさかのぼります。
当時キリスト教の布教に尽力した聖グレゴリウスを、アルメニア王トゥルダト3世が地下牢に12年間にわたって幽閉しました。
病に伏したトゥルダト3世が聖グレゴリウスを解放すると病気が癒え、王は自らキリスト教に改宗し、その地下牢の上に聖堂を建てたといわれています。
アルメニアの世界遺産は3件登録されており、どれもキリスト教の修道院や大聖堂です。
その中のひとつ、ゲガルド修道院は、首都エレバンから東方30kmに位置する13世紀に建造された修道院です。
ゲガルドの名称は、キリストの脇腹を突いた聖槍(磔刑に処せられた十字架上のイエス・キリストの死を確認するため、わき腹を刺したとされる槍)の一部がここで発見されたことにちなんでいます。
別名「洞窟修道院」とも呼ばれ、院域のいくつかは岩盤を穿って造られた洞窟となっています。